ALS(筋萎縮性側索硬化症)は筋力が次第にやせ細り、力が入りにくくなったり、体をうまく動かせなくなったりする病気です。
初期症状には手足の脱力感や動かしにくさなどがあり、現時点で治療方法は確立されていません。
ALSが進行すると、歩行や階段の昇り降りが次第に困難になります。
今回は、ALSを発症しながらも現役を続けるS様邸のご主人が、いす式階段昇降機を設置した事例をご紹介します。
S様邸のご主人(90歳)は、3年前にALSを発症しましたが、現在も士業で現役を続けています。
しかし、病気の進行により握力が弱まり、体を支えられずに階段から転落することがありました。
幸い大きなケガには至りませんでしたが、階段の移動には奥様や息子さんの介助が必要になりました。
さらに、体調が優れない日が増え、居室まで行けずに居間で寝ることも多いとのことです。
そして、ご主人の「もう少し仕事を続けたい」や、奥様と息子さんへの「介護負担を軽減したい」という思いから、ケアマネジャーから紹介された階段昇降機の設置を検討していました。
S様邸は基礎が高い構造で、居室へ行くには2つの階段のどちらかを通る必要があります。
1. 玄関に続く20段の外階段
2. 車庫から1階へ続く14段の屋内曲線階段
当初、どちらに階段昇降機を設置すべきかで悩んでいました。
まず、外階段は車庫前から広範囲にロードヒーティングが設置されています。
設置工事の際に壊してしまう可能性があることから、外階段への設置は難しいと判断しました。
一方、屋内の曲線階段には、上下階それぞれに幅60cmの小さなドアがあります。
このままの状態で設置しても昇降機本体が通れず、上下階ともに乗り降りに問題が出る状態でした。
問題のある状態で設置してもご主人の症状が悪化すると、昇降機を利用できなくなることが明白だったため、弊社はご主人やご家族に対して次の2点を提案しました。
下階のドアと枠の撤去に加えて、レールを延長して車いすでも乗り降りできるようにする。
▲設置前の下階の様子
階段昇降機をドア手前のギリギリの位置で停止させ、いす回転機能を利用して乗り降りするようにする。
※上階のドアは、地下の強い冷気が住居に流れ込むのを防ぐ役割もあるので撤去できません。
▲設置前の上階の様子
ご主人とご家族は、この提案に納得され、設置を決定しました。
下階はドアを撤去し、乗り降りしやすい場所までレールを伸ばしました。
▲左:ドア撤去後 右:設置後の下階の様子
上階は本体を回転させた際にドア枠の一部と干渉したので、その部分については撤去しました。
▲上階 干渉部を撤去
▲設置後の上階の様子
ご主人は上肢が動きづらいため、シートベルトや昇降機の操作に介助が必要ですが、「安全に昇降できるので仕事にも行ける」と喜んでいただいています。
今回の階段は、上下階に小さなドアがある特殊なケースでした。
しかし、このような特殊な階段でも、いす式階段昇降機を設置できないと決めつける必要はありません。
弊社では、これまでに様々な形状の階段に設置してきた実績があります。
長年培った技術と経験をもとに、形状やニーズに沿った最適なプランを提案しますので、諦める前にまずは弊社にご相談ください。